私たちにとって解決すべき問題はネパール連邦民主共和国(ネパール)における環境問題です。

ネパールには、世界最高峰であるエベレストをはじめ、ロイヤル・チトワン国立公園などの世界遺産やコシ・タップなどのラムサール条約登録湿地といった、荘厳な自然環境があります。しかしながら、首都圏及び地方で進行している環境問題は、ネパールに対する一般的な印象とはかけ離れたものなのです。

これらの環境問題の根本的・本質的な解決策は、人間の意識変革であるとの前提に立ち、国の未来を担う青少年に焦点を当てた環境教育活動を展開していきます。

解決すべき問題

首都圏では、人口の集中や急速な都市化を主な背景に、大気及び水質の汚染、清掃されない廃棄物などの問題が年々深刻さを増しています。その影響は都市の美観を損なうだけに留まらず、下痢や腸チフスといった病気の発生など、住民の健康及び周辺環境にも及んでいると考えられています。加えて、ネパール社会には未だ伝統的なカースト制度が影響力を持ち、低カーストによる廃棄物処理プロセスに依存する価値観が一般市民に根付いていることもその要因の一つと言われています。また、公共政策の観点では、首都圏への人口の流入・集中が急速だったが故に、行政サービスとしての廃棄物収集は組織的・財政的な基盤を持ち合わせておらず、都市全域をカバーできていないのが現状です。

一方、地方の地域においては、環境と保健衛生に関する基礎的な教育・学習が不足していることから、住民達は様々な病気を患っています。彼らは自らの生活を守るために、意識的に、もしくは無意識に森林伐採に関与しており、これらが結果的には洪水と地すべりを引き起こしています。

また、ヒマラヤなどの地方山間部においては、地球温暖化の影響により、山の雪が融解し、これが氷河湖を形成しています。この氷河湖をかろうじて堰き止めているのは、他ならぬ土砂であり、湖水量が増せば決壊をすることは必至です。30~40年後にはヒマラヤの氷が全て溶けてしまうという調査結果もあり、土砂が決壊した場合の被害は下流100kmに及び、およそ6,000人が被災することが予想されています。当然ながら、ヒマラヤの雪がすべて溶けてしまえば、アジアモンスーン気候が崩れ、日本への影響も免れないでしょう。

解決方法

環境問題の根本的・本質的な解決策は、人間の意識変革であると考えています。私たちはこの前提に立ち、自然は有限で貴重な資源であり、かつ人間にとっての共存相手であると認識し、持続可能な発展を志向する人材の教育及び育成が、長期的な視野における最適な解決方法であると考えています。短期的・直接的な解決方法としての、植林、環境美化、河川の水質維持などもさることながら、あくまで、その国の未来を担う青少年に焦点を当てた環境教育活動を我々の主軸として、短期的・長期的な事業を推進します。

利用手法

ネパールにおける環境教育活動では、教育・開発メソッドとして、体験型学習(Learning by Doing)および効果波及型啓蒙(Child to Adult Approach)を利用します。

教育は、それが実施される枠組みにより、フォーマル・エデュケーション(学校教育)、インフォーマル・エデュケーション(家庭教育)、そしてノン・フォーマル・エデュケーション(社会的教育)の三つの様式に分類することができます。私たちが推進する環境教育は、三つ目のノン・フォーマル・エデュケーションに該当し、ネパールで実施されている従来型学校教育の限界を認識した上で、学校以外の枠組みで組織的教育を青少年に提供するものです。つまり、机上の学問習得ではなく、学校で習う知識・技術を、実際のフィールドで運用して、実施しながら学ぶといった、感覚的・直観的な体験型学習が最適であると考えています。また、そこでの体験(学習内容)が、青少年から家庭へ、更には地域全体へ間接的に波及することを狙いとしています。